平尾台

数年前に家族で平尾台の鍾乳洞に行ったとき、カルスト台地の景色が壮観で、機会があれば一度歩いてみたいと思っていた。今回帰省したタイミングでちょうど時間ができたのでハイキングしてきた。

去年からよく公共交通機関を使ってハイキングしている。車だと当たり前だけど車に戻ってこなければいけない。ルートのバリエーションが豊富な山域ならくるっと一週まわるようなルートを組めるが、上手くいかなければピストンになる。しかし公共交通機関を使えばスタートとゴールが違っても問題なく、行ったっきりのルートにできる。友人に連れられて行った登山でこの面白さにハマってからはハイキングがより一層楽しくなった(だって歩いてきた道を戻りたくない…)。

平尾台ハイキングは朽網駅からスタートして、上貫バス停までのルートにした。道中はカルスト台地を満喫しつつ、ポコポコしたかわいい山をいくつか登る。きつかったら平尾台のルートはショートカットできるのでエスケープも問題ない(個人的にエスケープを確保するのは重要事項)。

前日は猛暑でこの日も天気予報によると気温は高め。熱中症の危険もある。低山で半パンを履いていって失敗したことはあるけど、暑さと天秤にかけて半袖・半パンで行くことにした。もちろん日焼け止めは塗りたくった。朽網駅に着くとコンビニがあったので朝食にあんぱんとコーヒーを買って近くの公園で食べ、その後は舗装路を歩いて登山口へ。

大きな池(昭和池)の隣を通って鳥の囀りを聞きながら木陰の道を進む。ここは最高の散歩道だった。

低山あるあるかもしれないがあまり人気のない山やルートの場合、往々にして草が生い茂り、蛛の巣がすごいことになっている。この昭和池から偽水晶山を抜けて平尾台へ向かうルートもその類だった。登山道に入ってすぐの樹林帯は暗くじめっとしていて、歩いていると伸びきった草木に肌があたる。半袖・半パンで着たことを激しく後悔した。今にもヒルが出そう…。せめてもの対策でヒル下りのジョニーを吹きかけた。両手に枝を持ち、蜘蛛の巣を振り払いながら早く通り過ぎたい一心でペースを上げてゼーハー言いながらなんとかじめじめゾーンを抜けた。幸いヒルには会わずに済んだ。

樹林帯を抜けると水晶山に向かう尾根沿いに出た。暗くじめじめした雰囲気から一転して青空が見える。暑いけどカラッとしていて、心地よい風が吹いていた。半袖・半パンで来て良かった!
そう思ったのも束の間、尾根伝いの道はぎりぎり登山道が見えるくらいで、肩ほどまで伸びた夏草が生い茂っていた。さらに嫌なことに斜度に対して道がまっすぐついている(蛇行していない)。今からこの道を進んでいくのかと思うと絶望した…。

這いつくばって草をかき分けて進む。肌に草が当たり、棘にひっかかれる。何かヘビ的なものが出てきてもおかしくない。恐ろしい。早く登り切ってしまいたくてペースを上げる。それに合わせて脈もどんどん上がる。きつい。汗がとめどなく出てくる。喉が干上がって、暑さでフラフラになりながら、なんとか一息つけるところまで一気に登った(まさに直登)。ザックをおろして水をがぶ飲み。塩分タブレットを一気に数個口に放り込む。また水をがぶ飲みする。ふー。一息ついて振り返るとすごい展望だった。

偽水晶山付近からの展望

大きな電波塔と平尾台

ルートがわからないほど伸びた夏草

その後も草をかき分けて進んだ。もうスネはズタボロに…。しばらくすると大きな電波塔がある場所にでた。そこからは舗装路で、人の気配がある。どうやら平尾台に入ったようだ。一安心。登山計画ではしばらく舗装路を歩く予定だったが、所々に整備された登山道(草が刈られている!)がある。地図を見るとサクッと舗装路に戻ってこれそうなのでちょっと寄り道した。

寄り道した先は広谷湿原へ続いていた

歩いてきた尾根

舗装路に戻って、端にある吹上峠休憩所を目指す。道中これぞカルスト台地な石灰岩柱がゴロゴロしていた。ぽこぽこした丸みのある山がいくつもあった。かわいい。日陰はなく暑かったけれど風がふくと草が揺れて心地よい。歩いていると遠くの方から笛の音が聞こえた。徐々に音が大きくなってきて平尾台の中央辺りの駐車場まで来ると笛吹がいた。風景と相まってゼルダの伝説BotWのカッシーワを彷彿とさせた。話しかけたら祠チャレンジ始まりそうだった。話しかけなかったけど。
ここでおにぎりを食べて、プラティパスからペットボトルに水を入れ替える。水は念の為3.5リットル持ってきた(トイレがあったからそんなにいらなかったかも)。

これぞカルスト
この山は次回登りたい
右に見えるシルエットが笛吹。自分は左の東家で休憩した

ここから吹上峠休憩所までは緩やかな下り基調の横移動で、羊群原の石灰岩柱を眺めながら風に揺れる夏草のなかをゆったりと歩いた。道は綺麗に草がかられていた。奥には大きな穴を開けた採掘場が見える。採掘場からはこーんこーんと一定のリズムで音が聞こえた。

いい轍

休憩所に着くと少しお腹が減っていることに気づいて補給することにした。このハイキングではペヤングソース焼きそばと、その茹で汁でスープを作ることに挑戦しようと思っていた。しかし平尾台はどうやら火気厳禁のようで、この挑戦は持ち越し。湯が沸かせないので手持ちのプロテインバーを頬張った。ウィダーのプロテインバーはサクサクしていて美味しい。少し休んで、最後の登りに備える。吹上峠休憩所は347メートル。ここから711メートルの貫山山頂まで登りだ。

休憩所の地図

太平山までは緩やかな登りで工程はそこまでキツくなかった。風も吹いていて暑さも大丈夫。ただ草が結構伸びていて歩く度にスネがやられた。ちりつもダメージで、太平山に着く頃にはスネの痛みが限界に。捻挫した時用に持ち歩いている固定用の白いテーピングでスネの全面を覆う。汗でうまくテープが付かなかったから、上部をぐるっと一周まいたら安定した。このスネテープが草に効果的面で完璧なガード力を発揮した。最初からやっておけば良かった…。

岩の間を登っていく

太平山からの景色はこの日一番の絶景だった。このルートを工程に入れて良かった。

太平山から少し降って次は四方台へ向かう。しかし四方台までの道のりは壁のような斜面を登らないといけない。しかもまたまっすぐな道。登山道として何かがおかしい気が…。これを見た時は登りたくないなーと、ネガティブな気持ちになったけど、ここ以外にいい道もなさそう。仮に迂回できたとしても結局貫山まで行くのだからどうせ登りだ。諦めてゆっくりゆっくり登った。どんな急な坂でも歩幅を小さく、ゆっくり進めばそこまで疲れない。距離はなかったため思いのほかすぐに四方台についた。四方台からは貫山の頂上が見えた。またゆっくりと登っていく。心拍が上がらないようにじっくりと登る。

四方台への登り
奥に見えるのが貫山
貫山の反対側の風景

貫山からはあとは降るだけ。降るだけとは言え、ずっと降りは結構きつい。自分は降りよりゆっくり登るほうが好きだ。登りと違ってゆっくり降るのは大変で、案外走ったほうが楽だったりする(個人の感想)。ただどちらにしても長く降っていると大腿四頭筋が悲鳴をあげる。登ってる最中は痛くなかった足底も痛くなってくる。疲れてくると集中力も切れてきて怪我の恐れもある。最後まで気は抜けない。

山頂
山頂からは海が見える

貫山から上貫バス停までのルートは綺麗に整備されていた。行きの水晶山ルートとはだいぶ様子が違った。どうやらこちらがメインルートのようだ。その証拠か、何人かの人とすれ違った。そのうち一人の方に「あとどのくらいで頂上ですか?」と聞かれた。降り始めたのが13時過ぎだったので、一番暑い時に登られてて明らかにきつそうだった。 幸いすれ違ったのは降り始めたまもない頃だったので「あともう少しで頂上です、頑張ってください」なんて声をかけて、塩分タブレットを渡した。普段の自分からは想像できない社交性。こういうこと自分もするんだと、自分に驚いてしまった。存外、自然の中にいたほうが社交的になれるのかもしれない(まぁ自然を相手しているからこそ、コミュニケーションが大事なんだろう)。

往路に比べて鬱蒼としていない
紫陽花の季節

何人かとすれ違いながらテンポ良く降っていくと人工物が見え、間も無く舗装路になった。このハイキングも終わりが近い。そこそこ坂がきつい舗装路を進んでいくとバス停があった。Garminの時計を見ると19キロ、約7時間の工程だった。そこへちょうどバスが来た。一日数本のバスがタイミング良く来るなんて運がいい。バスに揺られてたら眠気が押し寄せてきて気づいたら降りるバス停に着いていた。

バス停

平尾台は標高は高くないが、カルスト台地が独特の景観を作り出していて、長距離を歩いても飽きさせない。今回はルートに含まなかったが、名所の岩なんかもあるようで、また別の季節に歩いてみたい。特に秋は大地が黄金色になるようで一度は行ってみたい。

平尾台ハイキング / titoさんの偽水晶山四方台広谷台の活動データ | YAMAP / ヤマップ